今月の言葉 > 「標語解説書」から > 平成18年版 9日

 他人の働きに理解がないと自分
 だけ苦労していると考えやすい

 奥さんが用事で家をあけることになり、数日間「主夫」をすることになったAさんは、家事の大変さを初めて知りました。
 おいしくて栄養があって経済的な食事をいつも求めていましたが、これは無理な要求でした。休日に相手をするのと違って子供には随分手が掛かりました。洗濯は洗濯機が勝手にしてくれると思っていましたが、洗っても干すのも煩わしいし、取り入れてたたんで片付けるのはなおさら…。
 アッという間に汚れ物がたまり、家の中が散らかっていきました。
 奥さんの姿はいつも何となく見ていて「あんなことぐらいだれでもできる」と思っていましたが、見るとするでは大違いでした。
 体力と気力、頭脳と技術、気持ちを切り替えて次々と用事をこなすなど、能力のすべてを使う高度な


仕事でした。
「百聞は一見に如かず」と言いますが「百見は一つの行いに如か」ないというか、Aさんは自分でやってみて初めて、日ごろ奥さんの働きぶりを、ぐずぐずしているとか、要領が悪いとか、不足を思いながら見ていたことに気が付きました。
        ◎
 周りが自分の働きを理解してくれていると思えるときは、少々しんどくてもがんばれるものですが、分かってくれていないと感じたとたん、やる気が失せてしまいます。
 それは自分を振り返ったら「分かる」どころではないくらい承知していることで、自分がこんなにがんばっていることを周りの人が少しも分かってくれない、という気持ちをAさんも抱えていました。
 奥さんの役割を体験して、自分も人の働きを全然理解していなかったと、初めて気が付いたAさんでしたが、他人の働きの外見は分かっても、そこにある苦労や喜びまでは理解できていないのが普通だと思います。


「自分だけ苦労している」という孤独な思いは、自分には周りの人や出来事の、本当の姿を見る目がまだない、ということです。人に感謝する心に目覚めて、周りの本当の姿を見る素直な目を磨いていきたいものです。




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