今月の言葉 > 「標語解説書」から > 平成13年版29日

言葉は同じでも体験から出た
 ものは人を動かす力がある


 人は他人の言い分や理屈に納得しなければ相手と協調したり自分の行動を変えたりしないものです。

 また納得してやるときと、納得できないままやらざるをえないでやるときとでは、行動や結果に雲泥の差が出てきます。

 人を使ったり、人に頼み事をしたり、人と協力して物事をやるときは、その物事について十分説明するだけでなく、相手の考えや心情をよく理解して話すことが大切なのは、ことさら申し上げるまでもありません。

 しかし、同じような事柄を言い表し、同じような


言葉を使っていても、それを聞いている相手には決して同じようには響かないということが、しばしばあります。

 同じようなことを言っても、それを使う人の心のままに、あるいは同じ人でもそれを話すときの心の状態のままに、快く響いたり、いやな感じに聞こえたりするのです。

 これは言葉は生きているということかも知れません。

 言葉が拙く、話し方が下手でも、感動とまではいかなくても、強い印象をもって相手の心に響く話があります。それは自分が体験したことや、体験に基づいて湛えることになった考えや心情を話すときです。

 体験したことは、言葉や話術を超えて相手に強く訴えかけるものがあります。体験したことに人を揺


り動かす力があるのは、その人が生きてきた中身がいっぱい詰まっているからでしょう。

 しかし、体験談であっても、中身や話し方を誇張したり、「自分が」やったのだ、という色合いが強く出てくると、感動も共感もできず、むしろ反発を感じてしまいます。

 体験から出た言葉が人の心を打つのは、その物事がよく分かっているだけでなく、体験によって心が鍛えられ、人の気持ちを理解できるようになっているからで、誇張や自己顕示をしたくなるようでは、「体験」の大事な部分を理解していないことになります。

 周りの人が感動したり共感したりするのは、体験の中身というか、体験によって何を得てきたかということによります。体験を元に自分という人間が高まっていてこそなのです。




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