今月の言葉 > 「標語解説書」から > 平成12年版 1日

明日飛躍しようと思うより
今日小さくても一歩を進めよう

 一昨年、サッカーの日本チームが初めてワールドカップに出場した時、サポーターの人たちが「翼を下さい」という歌を歌って応援しました。
 この歌は、鳥のように空を飛びたいという自由への憧れと、新しい世界に飛躍したいという、切なる願いが表された歌です。サッカーの弱小国だった日本チームに堂々と世界に羽ばたいてほしい、サポーターの熱い思いがその歌声に籠もっていました。

 私たちは思い通りにならない現実や、停滞している今の自分に別れを告げて、一気に新しい境遇に向かって飛んでいきたいという、飛躍への夢を持っています。その夢が生きる力ともなっています。

 しかし、この「飛躍」という願望には、私たちを迷わせる魔力もあります。「飛躍」することばかり


夢見て、地道に歩くことを煩わしく思っていると、「明日飛ぶぞ、明日は飛躍するぞ」と思っているうちに、ついに努力をせずに時を過ごしてしまう恐れがあるからです。今日唯今の努力が一番大切で、その積み重ねがあってこそ、いつか大きな飛躍の時も迎えられるのです。

 日本のサポーターはそのことをよく分かっていたと思います。日本は予選リーグで敗退しましたが、サポーターは節度ある応援と、試合後ゴミを拾い集めることで、我々も選手に劣らないくらい真剣にサッカーに取り組んでいるという姿勢を示しました。これが選手たちを一層本気にさせたことでしょう。このような姿勢は今後の発展の力になるに違いありません。

 客席のゴミを拾う行動はサッカーを愛する熱い気持ちを現したもので、自分たちにできることがあれば何でもやるぞ、と「本気」で日本のサッカーを盛り上げている姿でした。



 彼らは飛躍を願いながら、今、自分にできる事をやり遂げました。その姿勢は選手だけでなく多くの人を励ましました。

 飛躍の夢に酔わず、それを今日の努力の原動力にして一歩一歩踏みしめていく。それが翼を持たない人間が飛躍を実現するための生き方だと言えるでしょう。自分の可能性を信じて大きな夢を持ちましょう。そして、今日の一歩を着実に進めていきましょう。




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