今月の言葉 > 「標語解説書」から > 平成12年版18日

自分の心は変えられないのに
人の心は変えさせようとする

 「あれが無ければ、あの人もいい人なんだが…」という気持ちで周りの人を見ることがよくあります。「無くて七癖」ということわざがあるくらいですから、人の癖や困ったところに対して、昔から鋭い批判を加えてきているのでしょう。

 でも、もしあの人が、困った癖を直した時には、批判している当人は一体どうするのでしょう。人の欠点や短所を面と向かって忠告する勇気も親切心もなく、相手を嫌って陰で困った困ったと愚痴をこぼしている自分は、自分自身のそういう困った癖を克服できるのでしょうか。

 そんな状態で人の欠点を嫌う気持ちを持ったままで、勇気を出して忠告したとしても、相手の心に響くように伝えられるものではなく、むしろ要らぬ気


を遣って言葉を選びつつ言うため、かえって反感を持たせてしまうかも知れません。

 しかし、そんな自分を省みて「自分はこんなことしか思っていない人間だ」と、はっきり認めることができるのが、人間の素晴らしさであり、尊さでもあります。

 私たちはこのような素直な反省から、「人間は癖や欠点を持っているからこそ、この世に生かされているのだ」という、厳しさと優しさを併せ持った視点と、生きる姿勢を打ち立てることができます。

 あの人も時々は自分自身を省みることがあって、人に迷惑な癖を出して多くの人にイヤな思いをさせていることを、悔やんだり反省したりしているかも知れない、という洞察力や思いやりは、自分をしっかり見つめ、自分が進む方向をきちんと持った時から備わってきます。


 そういう気持ちになってはじめて人の心を変えられるような、影響力や、説得力や、人柄を有する存在として、周りの人と心から仲良くし、お互いを磨きあえる人間関係を築いていけるのです。

 人の心を変えさせようというような気持ちはサラリと捨てて「気付いたことは言わせてもらおう」という謙虚な気持ちで人に対していきたいものです。




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