今月の言葉 > 「標語解説書」から > 平成12年版30日
忙しいと思っている時ほど時間
の無駄遣いに気付きにくい
「忙しくて…」と言うと、たいがいは「結構なことですね」という答えが返ってきます。私たち日本人は昔から忙しいのが好きなのかもしれません。経済の状況が思わしくない昨今は、「忙しい」という言葉が羨ましく思える人も多いのではないでしょうか。「忙しく働ける」ことは、大変恵まれている状態であるということをしみじみ思います。
ところで、忙しい時は一つ一つの事を素早く片付けなければなりませんし、そのためには、時間をできる限り有効に使わなければなりません。日常はそのように努めていますが、実際に忙しいだけでなく、忙しいと「思っている」時はどうしているでしょうか。
忙しい時は「あれもしなくてはならない、これも
やらなくてはならない」と、焦るような気分になってしまいがちです。そのため、今現在このことが重要かどうか、急ぐ必要があるのかどうかの判断に狂いが生じやすく、やらなくてもいいことや、急ぐ必要のないことを先にやってしまったりしています。
そういう無駄なことや無理なことをしていても、自分は一生懸命働いている、という意識が一方にあるため、そのことに気付けなくなっていると思います。
「あれもこれもやらなくてはならないのに、人手はないし時間も足りない」と、忙しさに追い立てられていると、忙しいことを不足に思ってしまいがちです。忙しい時ほど、自分の時間が現実の働きの中でどのように費やされているか、状況が推移していく中で時間と働きを有効に使っているかどうか見極める必要があるのに、「忙しい」という不足や不満がこもった思いになることによって、状況を客観的に
見る目を曇らせてしまうのです。
また「自分だけこんなに忙しい」という思いでいるときは、仕事の端々に気持ちが届いていないものです。これでは時間を有効に使う知恵は湧いてきませんし、一生懸命やっているつもりでも、心のこもらない働きでは、「時間の無駄遣い」と言われてしまうようなことしかできません。時間を有効に生かして、これが自分の仕事、これが自分の生き方、と言えるものを創っていきたいものです。