今月の言葉 > 「標語解説書」から > 平成11年版21日

 ただ一言の感謝の言葉で周りも
 自分も温かい心になれる

 町内の世話役の順番が回って来ると町内会費を集めたり、市民新聞などの配りものをすることになりますが、留守のお宅があったりして、結構面倒な仕事です。

 ところが、尋ねて行った時に、「お世話様です。有り難うございます」と、丁寧にお礼を言われることがあります。順番にやっている仕事なのに、お礼を言われると、心が温まるような気持ちになります。

 しかし、最近はこのような心温まるお礼を言われることは、あまり経験しなくなったように思います。現代は感謝や満足する心が貧しくなって、人に要求することが多い時代になったのか、「有り難う」という言葉を聞く機会が少ないように思います。



 本来「有り難う」と言うべき場面でも、別の言葉を使っています。例えば電車で座席を譲ってもらった場合、「すみません」という言葉を使う人が多いようです。

「すみません」という言葉は、本来「申し訳ありませんでした。このままではすまない状態にしてしまいました」という「謝罪」の言葉であって、「感謝」の言葉ではありません。相手が好意で席を譲ってくれたのですから、素直にそれを受けて「有り難うございます」と明るく相手に感謝の気持ちを伝えるのが自然でしょう。

 それを「すみません」と言うのは、一見「疲れているだろうに申し訳ないことだなぁ」と相手の立場に立ってものを考えているように見えますが、実は心理的に相手に借りを作りたくないという屈折した思いが働いているように思います。


 席を譲った人も「すみません」と謝られるような言葉を聞くよりも、「有り難うございます」と明るく言われた方がどんなにか気持ちがいいでしょう。

 このように無意識に使っている言葉の背後には、現代の私たちの、感謝や明るさが欠けた心があるのではないでしょうか。

 そこに気付いて、「有り難う」と明るく言うことを心掛けたいものです。「有り難う」を常に表現していると、人や物に対して感謝する思いが心の中に育ち、周りも自分も温かい心に包まれていくでしょう。




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