今月の言葉 > 自然誌 文章から > 平成18年 2月号 こころの深呼吸

突然、警報音
・・・

相手の立場になりきってみよ
対立の感情は姿を消す

 先日、いつも利用するスーパーに買い物に行くとビーッという警報音が流れていて「何かあったのかな」と思いました。客もレジ係の人も口々に「何かしら」と話しています。
 そこへ店の奥から女性店員が急いで出てきて「今、店内放送設備の点検に業者が来て、警報機のテストをしています。もうしばらく音が鳴りますが、異常ではありません。お騒がせしております」と言いました。
 すると、レジにいた女性店長がその店員に「それならそうと、事前に知らせてもらわないと、慌てるじゃない」と叱り、お客さんには「お騒がせして申し訳ございません。異常ではございません。すぐに


納まります。しばらくご迷惑をお掛けします」と優しい口調で挨拶しました。
 叱られた店員は店長の勢いに押されたのか「すみませんでした」と言って下がっていきました。店内は警報音が流れていますが、ふだん通りに戻りました。
 店内を歩いて買い物を続けていると、店の一番奥の売り場に先ほど叱られていた店員さんが他の店員と何か話しています。
「私の責任じゃないのに、なんで私が怒られなきゃいけないの。私は知らせに行っただけなのに…」と、店長への不満を同僚にぶつけていました。私はこの話を聞いて、立場による思いのすれ違いを見た思いがしました。
        ◎
 店長は店を管理する責任があります。今回の騒動もどこに原因があるにせよ、お客様に安心して買い物をしていただくことは店長の大事な務めです。
 それが警報音で破られたことについて、まず謝る必要があります。そのため、少し感情的になってし


まった面はあるにせよ、知らせに来た店員を叱ることで、騒動を収めようとしたのだと思います。
 ですから、店を円滑に運営するために必要な行動であったと信じて行動した店長は、叱られた店員が不満を漏らしているなんて気付いていないかもしれません。
 今回の騒動のそもそもの原因は、業者が店長に了解も取らず、営業中にいきなり(店の奥にいた人には言ったかもしれないが)試験をしたことです。あの店員は、そのことを店内に一刻も早く知らせようと、親切心で売り場に知らせに行ったと思います。
 それなのに、感謝されてもいいのに、逆に大勢の前で叱られてしまいました。自分の好意が裏目に出て、行き場のない不満が出たのでしょう。「あのように怒らなくても」という気持ちでいっぱいだったのかもしれません。
        ◎
 あの場で店長がなぜ怒ったのか分かっていないだろうな、感情的なしこりが残らなければいいけど、


と思いました。私が目撃したのはほんの少しの場面なので、もしかしたらあの後、店長が「あの時はごめんなさい。ああしなければ収まらなかったのを理解して」とフォローしたかも知れません。
 私は第三者の立場で見ていましたので、店長の立場も理解できますし、店員が不満を漏らす気持ちもよく分かりました。お互いがもう少し相手の立場に立って考えていれば歩み寄れることなのです。
 そう思った時、これは日常自分が経験していることと同じではないかと思いました。
 私もどこかで知らないうちに人に不満を思わせているかもしれません。
 一方で人の不足を思っていることが、実は私の誤解や勘違い、あるいは組織やもっと大きな流れから見て「その時、必要なことが起きてきた」ということなのだと思いました。
 自分の立場や考えを離れて、もう少し周りの人のことを思いやれば、状況や互いの立場を理解できて、不満に思うことがなくなるのではないかと思い返しました。


人間はどうしても無意識のうちに自分本位に考え、行動します。そして「これが絶対である」と思いこむ一面もあります。
 だから、意識して相手の立場に立って物事を考え、行動しなければならないのだと思いました。
 その後、あのスーパーでは店長さんも店員さんも相変わらず忙しくきびきびと働いています。
 きっと店長さんのフォローがあったのだろうと思います。




〒545-0043 大阪市阿倍野区松虫通1丁目2-27
サイトマップ
Copyright ©shizensha All Rights Reserved. 無断転載禁止