今月の言葉 > 自然誌 文章から > 平成16年 7月号 家庭のできごと
国民年金と健康保険
田村國光
♭切れ目なく
昭和四十八年十二月、私は十四年間勤めていた会社を辞めて自然社に入った。
会社を辞める時、人事課にいた同学の後輩N君から「田村さん、今度勤めるところは厚生年金がありますか」と尋ねられた。
なぜそんなことを尋ねるのかと思いつつ「多分ないと思う」と返事すると、社会保険労務士の資格を持っている彼は、「それならすぐに国民年金に加入する手続きをした方がいいですよ」と強く勧めてくれた。
生来ずぼらな私ではあったが、この時はN君のアドバイスに素直に従って国民年金に加入した。
一方家内は昭和三十七年十二月、私と結婚するために務めていた銀行を退職したが、その時それまで積んでいた厚生年金を一時金で払い戻してしまった。
しかし、結婚した月に近所の米屋の若旦那から「国民年金に入ったらいいですよ」と勧められて加入した。
家内の記憶によると当時は確か月額百円か二百円だったそうだ。
だから、私たち夫婦は年金の払い込み期間に関しては全然切れ目がない。そんなことは到底あり得ないことだが、もし私が国会議員になったとしても、年金の件で追求される気遣いは全くない。
♭背後からのお力添え
私たち夫婦は「将来のことを考えて年金は切れ目なく続けなければ」と考えていたわけでもなかったのに、周囲からのアドバイスによって何気なく自然に国民年金に加入することになった。
お陰で、私は三年前から、家内はこの六月から年金の支給を受けている。
多分、私も家内もN君や米屋の若旦那から言われなかったら、そのままにしていたか、あるいは大分遅れてから慌てて加入するようなことになっていた
かも知れない。
これは背後からのお力添えがあったとしか考えられない。
♭お互いに助け合う
二十数年も以前のこと、夫婦して初代教長橋本郷見先生のお宅にお邪魔したことがあった。
お茶を頂きながらの雑談の中で健康保険の話になって、「お陰様でお医者さんに全然かかってませんので、健康保険はただ払っているだけです」と言った。
すると「それは有り難いことではないか、その保険料は病気で困っている人の治療費になっている。自分が健康に恵まれているだけでなく、人様の経済的な手助けをさせていただいているのは有り難いことだ」とおっしゃった。
教長様はさらに「保険はお互いに助け合うという精神から始まったものだが、多くの人は自分の損得にこだわって、その元を忘れている」ともおっしゃった。
おだやかな口調で話されているのに、私には厳しく叱られたように感じられて、思わずひざを正していた。