今月の言葉 > 自然誌 文章から > 平成16年 4月号 家庭のできごと
卒業という合格
橋本研二
この春長女は高校を無事卒業しました。今は美容師を目指して勉強しています。
三年前、長女は高校受験で第一志望の学校に入れませんでした。彼女の力からすれば合格する可能性はあったと思うのですが、高をくくって気が緩んでしまっていたのでしょう。公立高校の入試の成績が芳しくなく、私立の高校に通うことになりました。
♭予想外
希望校が不合格だったことのショックはかなりなものだったようです。
中学時代の自由な雰囲気と全く異なる、規律の厳しい私立女子校で毎日を過ごすという予想外の展開に気持ちが付いていけなかったようで、この高校になかなかなじめませんでした。
細かいことまで注意してくださる先生が担任だっ
たこともあって、つらい気持ちで通い続けるうちに、この高校を辞めたいとまで思うようになりました。
彼女は「みおしえ」を頂いて、今の高校が自分にとって一番ふさわしいと教えられました。なぜふさわしいのか、おそらく彼女には分からなかったでしょう。
しかし「みおしえ」は絶対正しいと思う気持ちは心の底にあったようで、心は大きく揺れ動きながら、一年二年をなんとか過ごしました。
三年ではまた一年生の時と同じ担任の先生に当たりました。しかし、三年生の後半には、後もう少しで卒業できるという希望が見えてきたためか、明るい表情が増えてきました。自分からアルバムの編集委員に立候補したり、積極的な姿勢が表れてきて、卒業時には学校との別れを惜しむ様子がうかがえました。
親にとってもやきもきする長女の高校生活でしたが、価値ある三年間だったと思います。中学まではただ楽しいばかりの学校生活でしたが、高校生活の
お陰で、嫌なことに耐える力を養えたようです。
♭心の幅
そればかりではなく長女の人柄に大きな変化が見られます。心の幅が広がったと言うか、他人に対する許容範囲が大きくなっています。不満がわいてもそれにこだわり続けないで、気持ちを切り替えていくようになりました。
少し謙虚にもなりました。自分が楽しくなりたいけれど、周りの人にも楽しくなってほしいというように、他人に心を向ける度合いが大きくなっています。
もしも望み通りに公立高校に通っていたら、人生が自分の思い通りになるかのように錯覚して、偉そうな思いをすることがあったかも知れません。
三年間の試練を乗り越えるうちに、他から教わることができない人生の大事な勉強を身をもって習い、彼女なりに身に付けたことは確かです。
志望していた高校に受かるよりもっと価値ある試験に合格したのだと、心から祝福してやりたい思いがします。そして神様は一人ひとりにふさわしい道
を用意してくださるのだと改めて思うのです。