今月の言葉 > 自然誌 文章から > 平成15年 7月号
運転免許証
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八十三歳のMさんが、自動車の免許の更新をすることになりました。
現在の道路交通法では滿七十五歳以上の方が免許証の更新をするときは、事前に教習所や自動車学校で講習を受けることが義務付けられているのだそうです。
Mさんは以前お世話になったことのある教習所へ講習を受けに行きました。受講者の中には八十八歳という方も来ておられたそうです。
講習が終わり、更新時に必要な写真を写真屋さんで撮ってもらって、家に持ち帰って奥さんに見せながら話しをしておられると、四枚一組の写真の一枚がソファーのすき間に落ちて、すき間に手を差し込
んで探しましたが見つかりません。ソファーの縫い目を破ってまで探したのですが見つからなかったそうです。
ソファーのすき間に落とした写真は、更新時に提出する写真だったので、ソファーを破って三時間もかけて探されたわけですが、それまでしても見つからなかったのだそうです。
そこで、これは何かを教えていただいていると思い「御替象願い」をしました。数日後「みおしえ」が下付され「運転することは極力避けて、やらぬがよいと知ります。大きな事故にまき込まれることになりかねないと知ります」と教えていただかれました。
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Mさんは先日、自転車で買い物に行き、お店で品物の代金を支払おうとズボンのポケットに手を入れ
て、財布が無くなっていることに気付きました。すぐ通って来た道を探しましたが見つかりません。
財布の中にはお金と自動車の免許証その他が入っていました。免許証は最近更新して交付されたばかりのものです。(警察に紛失届をしましたが今もって出てきません)
Mさんはこの紛失は何かを教えていただいていると気付き、御替象願いをし「みおしえ」をお願いされました。
数日後下付された「みおしえ」は三箇条で、最後の箇条に「自動車の運転をするのはふさわしくないと知ります」とありました。
Mさんは四十年前から印刷業をしています。昨年の二月、健康に自信がないということと、年金で気楽に暮らしたらよいという奥様の言葉で印刷業をやめることも考えました。
しかし「Mさん、まだ印刷の仕事やってるかね」という電話が時々あり「ハイやっとるよ」「じゃあ、これこれを何枚、何日までに頼む」と、長年の付き合いで細々とした説明の不要なMさんのところに注文を下さる方がまだまだあります。
「長い間ごひいきにして頂いているお得意さんですから、お断りもできず仕上がった物を車を運転して持っていっております」
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仕事を続けていく限り自動車は必需品かも知れません。また、どこへ行くにも自動車のあるなしで、便利さも、気分もずいぶん違います。Mさんの心情は痛いほどわかります。
でもMさん、あなたは今まで無事故、無違反でこられたそうですが、それはこれまでのことです。こ
れから先のことは分からないのです。
いやMさん実はわかっているんですよ。写真の紛失で「大きな事故にまき込まれることになりかねない」と教えていただいていますね。
免許証が入っている財布を落とした時「運転をするのはふさわしくないと知ります」と教えていただいていますね。このように大事に至る前に前もって教えていただいているではありませんか。
ということは、安全運転で慎重に運転するとしても、いつか必ず「『みおしえ』で教えていただいた通りにすれば良かった」とか「家族が言うように運転をしなければ良かった」とか「周囲の人が運転するなともっと強く言ってくれていたら」「免許証を隠してくれていたら」と後悔することが起こるということです。
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頂上が目の前に見えてきました。夢にまで見た頂上です。しかしあいにく大変な悪天候になってきました。登るか下山するかを決めねばなりません。
家族の人に「無理して登ることなかったのに」と悲しませないようにしたいものですね。
Mさん今は宅配便がありますよ。急ぐ時などは数時間で届けてくれるという話しですよ。