今月の言葉 > 自然誌 文章から > 平成12年 7月号
「いい子」にはほど遠いけれど
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小学校三年生の長男は、なかなか親の言うことを聞きません。
毎日、私や妻に叱られています。口で言っただけではあまり効果がないので、私としてはバシッと叩かざるを得ませんが、長男はまるでゲームのように逃げ回って、あまり効き目がありません。
サッカーをしているせいですばしこくなり、追いかけっこをするのも私にとって楽ではなくなりました。
どうしても言うことを聞かないときには、つかまえて暗い外に出し、玄関の鍵を閉めることにしています。三十分ぐらいするとしおらしくなり、妻の助言で謝りにきます。
でも、それからまた三十分もすると、叱られたことはけろりと忘れて、また何かをやらかしたりします。いつになったら「いい子」になってくれるのか…、まだまだ先は長そうです。
ただ、こんな一面もあります。
妻は時々当番のためサッカーのお手伝いに行き、おかげで練習や試合の様子をつぶさに見ていますが、子供たちの中でコーチから一番叱られるのが長男だそうです。
それは失敗が一番多いからというよりは、一番叱りやすいからだそうです。教えられたことは一応実行しながらも、怒鳴られても一向に気落ちせずに元気に駆け回るので、コーチの方々は気兼ねなく叱れるようだ、というのです。
親としてはこれまで、子供は素直なのが一番望ま
しく、叱らずに済めばどれほどいいか思っていました。しかし、叱られ強いというのは、一つの長所なのかもしれません。
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小学校のクラスに一人、運動神経抜群の子供がいて、長男をはじめクラスの男子のあこがれの的になっていましたが、次第にガキ大将に変身していき、横暴になってきました。
長男は初めのうちは彼の「手下」でしたが、彼がルールを守らないのが腹に据えかねて、一人反発したところ、大将の指図を受けた子供から時々嫌がらせを受けるようになりました。
それでも言いなりにはなっていないようで、ガキ大将も長男のことが一番気になるのか、わざわざ遊びに来たりします。担任の先生も、ガキ大将にただ一人造反する長男のことを、興味深く見てくれています。
この強さは全く父親の私とはと正反対です。家で怒鳴られ続けているうちに、彼はいつの間にか打たれ強くなったのかもしれません。
躾をしてもなかなか「いい子」にはなりませんが、心を鍛えることにはなっているようで、今日も子供の成長を願いながら、夫婦して大声で叱っています。