これがいいのだ
教主 橋本のり子
私は今年の十月で九十歳となりました。そこで自分の人生を振り返り考えてみますと、戦争中の小学四年生の時に新潟に縁故疎開をしました。それまで姉に甘えてきた私は妹と二人になり、姉の立場を生きなければならなくなり、我慢することを覚えました。 私は元々体も弱く我(わ)が儘(まま)な性格でしたが、あの疎開があったお陰で私は少し変わることができたのかなとしみじみと思います。
戦争は国と国民が不幸になり、困難な事であり、いけない事だと思いますが、幼い頃の体験から自分の思う通りにならない環境に置かれることは、人間にとって大事であると思っています。
この世の中の一切はかみの御心(みこころ)によ
って現れる神(かん)業(わざ)であると教えられていますが、自分にとって思う通りにならない事は日常いっぱい起きてきて、それに対してまず「何でどうして」と不足の思いが無意識に出るのは仕方のないことだと思います。
しかしながら、いつまでもその思いに捉われるのではなく、気持ちを切り替え、「思い通りではないけれど、これでいいのだ」から始まって、「これがいいのだ」と妥協ではなく得心して受け入れていくという腹の据わった生き方をしていくことが大切です。
それによって、今のこの厳しい世の中を心豊かに生きていける道となるのです。