今月の言葉 > 自然誌 巻頭文から > 平成29年07月号

親の恩に報いる
   教主 橋本のり子
   


 生家の亡き母は晩年に「あなたは親に何も心配かけないで親孝行だ」と言っていましたので、私もいつの間にかそのように思っていましたが、思い返すと幼い頃の私は体が弱く、戦中戦後の大変な時期に命に関わる病を患い、当時は治療法が無いと言われた私を抱え、母はどれほど心配していただろうかと気付きました。
 神訓に「親の心はかみの心である」とあるように、親は子供のことで嫌な思いをしたり、苦労したり、心配したことは、慈悲の心で忘れてしまいます。また昔から「父の恩は山より高く母の恩は海より深し」と言われているように、親の恩は簡単には辿(たど)り着けないくらい高く、またいまだ誰も行ったこともない海の底に例えられるくらい深く計り知れないものなのです。そのような親の恩を頂いて現


在の私たちがいることを忘れてはなりません。
 自分がしてきたことは、親が忘れても、消えてなくなりません。子として人として、親の恩に報いるという何かの形で償う必要があります。それは親にお詫(わ)びとか感謝の言葉を述べるような日常に行われる程度のことではなく、厳しい困難に出遭い、それを乗り越えようと悩み苦しみながら努力していく時に償いが適(かな)うのです。厳しい困難に出遭った時こそ「これは親の恩に報いる恵み」として、逃げずに受け入れ乗り越えていく心になることです。




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